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オリンピックな生き物達!

2014年3月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2017年3月1日)

ソチオリンピック

寝不足の日が続いていました。そうですソチオリンピックです。フィギアスケート男子、仙台出身の羽生結弦選手の金メダルの演技は凄かったです。一方メダルを期待されながら、ショートプログラムでまさかの16位、しかし翌日のフリーではもてる力の全てを出し切り6位入賞となった浅田真央ちゃんの演技には思わず涙がこぼれました。

今回のソチでは7競技98種の種目が行なわれ、スキーにもハーフパイプがあるなど、知らない種目もありました。7競技とはスキー、スケート、ボブスレー、リュージュ、バイアスロン、カーリング、アイスホッケー。さらにスキーはアルペン、クロスカントリー、ジャンプ、ノルディック複合、フリースタイル、スノーボードに分かれ、スケートもスピード、ファイギア、ショートトラックがあり、それぞれに男女別があったり、距離が違ったりと全ての種目を挙げれば、それだけで紙面がいっぱいとなってしまいますので、気になる方がいれば調べて下さい。

ショートトラックはミズスマシ?

オリンピック競技から生物の話題につなげるのはチョッと難しいですが、以下無理やりこじつけます。16年前の1998年、長野オリンピックで時の長野市長がスケートのショートトラックは「ミズスマシのようで見ていてつまらない」との発言を記憶している人もいるのではないでしょうか。確かにミズスマシは水面をくるくる動き回りますので、似てないこともないのですが、つまらないかどうかは各自の問題ですし、オリンピック開催都市の市長の発言としては×です。ただ日本人には余り向いていない競技のような気がしています。短いコースをくるくる回って順位を競いうため、割り込み、横入り合戦です。割り込みのテクニックにプラスしてスピードが要求されるのでしょうが、震災時にじっと順番を待つ人たちでは、とうてい勝てないと思ってしまいます。

先頭が風よけになる

スケートにパシュートという競技があります。前前回2006年のトリノオリンピックから正式採用されたたこともあり、あまりなじみがない競技です。1チーム3名、2チームの対抗戦でメインストレートとバックストレートの中央からそれぞれ同時にスタートし、チーム最後尾の人が先にゴールした方が勝ちとなります。そのためチーム内の遅い人を出来るだけ早く走らせる必要があります。走法としては3人を縦一線で走らせ、先頭がチームをひっぱり、後ろの人達は先頭を風除けに使って体力を温存し、先頭が疲れた時に交代をしながらゴールを目指します。この走法はガンやツル等の鳥類が群れで飛翔する時に見られる、V字型の編隊飛行に似ています。

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    ガンのV字型編隊飛行

風の流れを利用して省エネで飛翔

ガンやツル類では先頭の真後ろにつくのではなく、斜め後方に位置取ります。それにより先頭の鳥が飛ぶことで作った風の流れを、上手く利用し少ないエネルギーで飛ぶことができるのです。先頭を飛んでいる鳥がその群れのリーダーと思われがちですが、たまたま先頭を飛んでいただけで、時々疲れたから先頭交代!とか言いながら飛んでいるのでしょう。子供の頃の記憶にある「カギになれ、サオになれ」は、この飛び方をはやし立てた言葉ですが、今でも言われているのでしょうか。この冬も伊豆沼、蕪栗沼、化女沼等の県北地方には多くのガン類が渡来しました。そろそろ北帰行の時期です。先頭を交代しながら無事にシベリヤの繁殖地に帰って欲しいものです。パシュートを見ながらガン類の渡りを気にしている、変な人は私くらいでしょうか。応援に身が入らず、女子パシュートは残念ながら4位でした。

スキージャンプ

今回のオリンピックで私が一番期待していたのは、ジャンプの女子、高梨沙羅ちゃんでした。今期のワールドカップでは13戦で10回優勝しており、優勝できなかった時も2位か3位と必ず表彰台に上っていた選手です。結果は4位、残念でした。17歳ですのでまだまだです。これからの活躍に期待です。一方、男子は41歳の最年長ジャンパーの葛西紀明選手がラージヒルで銀メダル、団体も銅メダルと大活躍でした。海外ではレジェンド(伝説)との愛称で尊敬されています。ニュースでもレジェンドの愛称が定着したようです。また、金が取れなかったからこの先もまだまだやると言っていましたので、中年?の星として頑張ってほしいです。

葛西選手はモモンガ?

その葛西選手の飛形がモモンガに似ているとのニュース報道をチョッと見聞きしました。モモンガ!動物です。聞いたことはあるかと思いますが、どんな動物でしょうか?しばらく前のドコモのテレビコマーシャルに「モ、モ、モ、モ、モ、モ、モ、モ、モモンガー」と言いながらモモンガがメール?を打っていた映像を記憶している人もいると思います。ニホンリスよりもちっちゃくて目玉の大きなリスの仲間です。

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    モモンガの背面(食玩:フルタ食品)

妖怪が由来!

モモンガの語源が気になり調べてみました。昔々、人が松明(たいまつ)を掲げて通りかかると、突然風を吹かせて火を消してしまう妖怪がいました。その妖怪の名が「ももんぐわ」です。夜行性のため生態もよくわからず、ムササビと同じように皮膜を持っていて木々の間を飛び回ることから、妖怪の扱いをうけたのでしょう。ただモモンガが飛ぶ時の大きさは手のひらサイズです。松明を消すくらいの風は吹かせられません。同じ仲間のムササビは座布団サイズですので、こっちが近くを飛べばかなりの風圧です。昔はムササビとモモンガの区別はされていなかったようです。風を使って松明を消す妖怪「ももんぐわ」これがモモンガの語源です。

北海道のモモンガは本州とは別種

モモンガの学名は(Pteromys momonga:翼のあるネズミのモモンガ)ですので、学名も妖怪が由来となっていてビックリです。本州のモモンガは山地から亜高山帯に住んでいて夜行性でもあり、なかなか目にすることはありません。北海道には別種のタイリクモモンガ(亜種エゾモモンガ)がいて、こちらは都市部の公園から山中まで広く生息していますので、本州のモモンガよりは見やすいかもしれません。エゾモモンガはJR北海道がマスコットキャラクターとして使っていますので、IC乗車券「キタカ」(JR東日本のスイカと同じ)などにも印刷されています。北海道旅行の時は気にしてみて下さい。モモンガの写真がありませんでしたので、昔一部の人に人気のあったフルタ製菓の食品玩具(チョコエッグ)、動物シリーズ第二段の「モモンガ」の写真を掲載しました。飛んでいる姿ですので、背面からと腹面の2方向からの写真です。

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    モモンガの腹面(食玩:フルタ食品)

まだまだ雪の日が続きます

今年の冬は2月に入ってから大雪となり、関東甲信地方を中心に各地で観測史上最も多い積雪、あちらこちらで被害がでています。仙台でも2週間前の雪が消えず、日陰はまだコチコチの雪道ですし、国道48号は雪崩のために1週間以上も通行止めです。動物植物の話題の少ないこの時期に、かなり強引にオリンピックと動物の話をジョイントしました。ソチオリンピックは終わってしまいましたが、4年後には韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピック、2020年には東京で2回目のオリンピックが開催されます。その時はどんな人たちが日本代表として活躍してくれるのでしょうか。また、その時にはどんな生き物が注目されているのでしょうか。良い話題が多くなっていることを期待したいです。

  • 【参考資料】
  • 平田剛士『名前で読み解く 日本のいきもの小百科』(平凡社新書、2012年)、28-31頁
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