テクニカルノート

偽アカシア!

文:佐竹 一秀 2014年6月1日
(WEB公開:2017年6月1日)

アカシアの偽物?ハリエンジュ
image001.jpg

ニセアカシア(ハリエンジュ)の並木
H26.5.16

ジョギングコースの広瀬川沿いに(ニセ)アカシアの並木があります。そろそろ白い花をつける頃です。甘い香りもあり、気持ちよく走れます。

アカシアと聞いて、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」、あるいは北原白秋の「このみち」の中にでてくるアカシアを思い浮かべた人は、結構な年です。ユーミン(荒井由美→松任谷由美)のacacia(アケイシャ)、レミオロメンのアカシアなる歌もあるようですが…。私は残念ながら前者です。

ハチミツも採れます

ニセアカシア (Robinia pseudoacacia) は、マメ科ハリエンジュ属の落葉広葉樹です。
和名はハリエンジュ(針槐)。その名のとおり、葉のつけ根に長く鋭いとげがあります。原産地は北米ですが世界各地の温帯に分布し、日本には1873年(明治6年)に導入されたとのとの記録がありますので、かなり古い時代に渡来した植物と言えます。用途は街路樹、庭木、砂防・土止め・植栽等。ほかに、ハチミツの利用もあります。ニセアカシアの花から集めたハチミツは高品質であり、量的にも日本では一番多くつくられており、重要な蜜源となっています。和名は前にも記しましたハリエンジュですが、一般的に使われる名称であるニセアカシアは、種小名のpseudoacacia(「偽のアカシア」)を直訳したものです。

「ニセ」のほうが知名度あり

偽物があるなら本物もあるのですが、本物のアカシアはマメ科アカシア属の総称で、主に熱帯から温帯に生育しています。日本でも何種か栽培されていますが、関東以北では育たないといわれているようで、東北地方ではなじみがないかも知れません。そのため、アカシアと呼ばれているものの多くはニセアカシアと思います。冒頭の歌詞にアカシアが入っているもの、アカシア蜂蜜、札幌のアカシア並木はニセアカシアです。こちらのほうが本物より知名度があるので、せめて「ホンアカシア」にしてくれれば良いと思いますが…。紛らわしくなるので、以降は和名のハリエンジュと表記します。

  • image002.jpg

    ハリエンジュのとげ

  • image003.jpg

    ハリエンジュのつぼみ

外来種ではあるが…

ハリエンジュは前述の通り、明治時代初期に荒廃地の緑化、街路樹等に利用するために持ち込まれた外来種です。現在では全世界に分布していて、その旺盛な繁殖力のため「日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会 2002)」に選ばれています。ただ、その後の2004年に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)では、特定外来生物には指定されず、その下のランクの要注意外来生物になっています。特定外来生物にされると、栽培等が禁止されま。そのため養蜂家が剪定や病害虫の駆除などの管理をしてしまうと、栽培とみなされ罰せられます。そうなると、養蜂業が成り立たず蜂蜜が作れなくなってしまいます…そのためかどうかは良くわかりませんが、要注意外来生物にとどまったようです。要注意外来生物のなかの緑化植物(ハリエンジュも含まれる)や牧草については、生物多様性の保全上重要な場所へは新たに使用(緑化等で利用)せず、周辺環境へ配慮することとされています。また、ハリエンジュはリンゴ炭ソ病(果実に黒褐色の腐敗班ができる病気)の感染源となっていますので、リンゴの栽培地周辺では特に気をつけなければいけません。

土壌が富むことにもよしあし

ハリエンジュの生態系への影響としては、成長が早くまた樹高も25m程にもなりますので、太陽を独り占めして、在来植物を駆逐してしまいます。特に河川に多いため、カワラノギク、カワラヨモギ等の植物が消失してしまいます。

また、マメ科ですので根粒菌による窒素固定作用があり、土壌を富栄養化させます。根粒菌とは読んで字のごとく、植物の根につく粒状の細菌(バクテリア)の集まった物です。根粒菌は葉緑素がないため、光合成をすることはできませんが、そのかわりに空気中の窒素からアンモニアを作り出すことができます。宿主のマメ科植物から光合成生成物を分けてもらい、かわりにアンモニアを宿主にあげるという共生関係を持っています。植物は根からアンモニアなどの窒素化合物を吸い上げて利用しますが、貧栄養土壌中には窒素分が少ないため、育ちが良くありません。そこで根粒菌を持っている植物をまず植えて、それから作り出された窒素分を次の作物に利用することがあります。そのような植物は肥料植物と言われ、作物を作る場合などには有用です。

ただ、それが自然界に出た場合はどうでしょうか。日本の土壌は酸性で貧栄養土壌が広く分布しています。そのため、在来の植物の多くはそのような環境に適しています。ハリエンジュが繁茂することで貧栄養土壌を富栄養化してしまい、生態系の基盤環境を脅かすことが容易に想像できます。

このように外来種としての問題や蜜源としての有効利用もできるハリエンジュですので、なかなか駆除だけで片づけてしまう事はできない植物ですね。今後は有効に利用しつつも、できるだけ広げないようにしていく必要があると思います。

食べられる、でも毒もあり!
image004.jpg

ニセアカシア(ハリエンジュ)の並木
H26.5.24

この原稿を書きだしたときの写真が冒頭で、8日後の写真が右です。写真だとわかりにくいですが、白い花が咲きだしています。三分咲きというところでしょうか。 原稿も書き終わったので、これからジョギングをして、その後はビール…。つまみはハリエンジュの花のてんぷら…香りがあって美味しいとの事です。香りが強すぎるとの意見もあるようです。ただ樹皮に毒があり、馬や人の子供の中毒が報告されていますので、食べるときはくれぐれも気を付けてください。

  • image005.jpg

    ハリエンジュ
    (日当たりの良い樹頂部は8分咲き)

  • image006.jpg

    ハリエンジュの花

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


前の記事 <<  >> 次の記事

←連載・E-TEC一覧へ戻る 記事一覧へ戻る△ ページの上部へ戻る▲