テクニカルノート

秋の夕暮に思う

文:佐竹 一秀 2014年10月1日
(WEB公開:2017年10月1日)

刈りとった稲を干す方法
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ホニオ?

9月、秋です。私の中で秋の風景といったらこの写真です。最近ほとんど見かけなくなった、刈り取った稲を杭に干して乾燥させる「ホニオ?」(宮城県北ではそう呼んでいたような…)です。また全く見なくなってしまいましたが、刈り取った稲を2束・3束?使って、穂を上にしてお互いにもたれ掛けあい、それを一列に地面立てかける乾燥方法もありました。こちらは「ホダテ?」と呼んでいたような…。大昔50年も前の話ですが、学校行事のイナゴとりに飽きると、この「ホダテ?」をハードルに見立てて、飛び越えて遊びました。時々つまずいて壊してしまい、翌日の朝礼で注意されました。今は思えば悪いことをしていました(今更遅いのですが、反省しています)。

夕暮れのうた

秋の風景は夕暮れ時が似合います。そしてなぜか物悲しい気持ちになってしまいます。詩人であれば、巧みにこの感情を表現するのでしょうが、残念ながら私にはできません。その代わりに、秋の童謡や唱歌の一節を思い出すままに書き出してみました。

・静かな静かな 里の秋 お背戸に木の実の 落ちる夜は ああ 母さんとただ二人
 栗の実 煮てます いろりばた(里の秋:作詞 斎藤信夫)
・ふけゆく秋の夜 旅の空の わびしき思いに ひとり悩む 恋しやふるさと
 なつかし父母 夢路にたどるは さとの家路(旅愁:作詞 犬童球渓)
・夕焼小焼の、赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か (赤とんぼ:作詞三木露風)

などなど、寂しく物悲しい歌が多いと思いませんか。この気持ちはどこからくるのでしょうか。勝手な考え方ですが、秋分を過ぎ、日に日に日没が早くなり、間もなく冬がきます。日の長さの変化から、厳しい季節の到来を感じ、物悲しい感情が生まれてくるのではと思っています。 動物や植物も昼の長さと夜の長さの変化を感じ取って行動しています。動物では渡りや休眠、植物では落葉や花芽をつけることなどです。このような日の長さによる年周期的に変化する性質を、光周性(こうしゅうせい)といいます。夕方になると赤い光に反応して、飲み屋さんに行きたくなる、そしてついつい行ってしまう行動は、光周性ではありませんので、あしからず。

光周性をもつ植物
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菊:短日性植物

光周性については植物での研究が進んでいて、私たちに色々な恩恵を与えてくれています。秋分の日の前後にお彼岸で墓参りに出かけた人も多いと思います。墓前にお花と供物をそなえ、線香を上げて、故人の冥福を祈りつつ、好き勝手なお願いもしてご先祖様を困らせたのは私です。お供えの花は菊がメインだと思います。お盆や春彼岸の墓参り、あるいは仏壇にお供えする花も菊がよく使われます。栽培されている菊は開花時期によって夏菊(5~7月)、夏秋菊(8~9月)、秋菊(10~11月)、寒菊(12~1月)と分類されます。ほぼ一年中なにがしかの菊が咲いていますので、お墓や仏壇に供えることができます。ただ真冬から春(2~4月)にかけては、普通の状態では花を咲かせることができません。ビニールハウスで育てていますが、暖房を入れただけではだめです。ここで必要となるのが光周性です。

実は「暗さ」が重要な短日性植物・長日性植物

植物には冬から春にかけて日が長くなると花芽を付ける長日性(ちょうじつせい)植物、逆に夏から秋にかけて日が短くなると花芽を付ける植物を短日性(たんじつせい)植物、光の長短に関係しない中性植物の三つに区分できます。

短日性・長日性といっても日中の長さではなく実は夜の長さを基準にしています。大まかには春に咲く花は長日性、秋に咲く花は短日性です。菊は短日性植物の代表格で夜の長さが11時間以上になると花芽をつけます。そのため夜間にライトを当ててやると、菊はまだ日が長いと錯覚して花芽を付けずにいます。花芽を付けてから開花するまでに60~70日かかりますので、1月中旬頃になったら明かりをつけるのをやめると、春の彼岸の頃に花を咲かせることができるのです。電照菊(でんしょうぎく)という言葉を記憶している人も多いと思います。最近はあまり聞かれない言葉となってしまいましたが、これの事です。

光周性を利用してクリスマスケーキにイチゴをのせる

亘理町、山元町で晩秋から年明けまでの期間、夜間にビニールハウスに明かりがついています。これはイチゴの電照栽培です。イチゴも短日植物です。夜間の電照は花芽を付けさせるだけでなく、葉の成長を促進し、元気の良い株に仕上げ、おいしい仙台イチゴの収量を上げるために行われています。実は電照の前段階として、夜冷短日処理が8月頃に行われています。これは親株から採った苗を12,3℃の冷暗所に1日16時間入れることを10~30日繰り返すことで、イチゴを促成栽培し、クリスマスケーキの上にイチゴを載せられるようにしているのです。今年も間もなくこの明かりがみられると思います。地元の震災復興の灯りになっているとも思います。

あまりにも自然に逆らうのは…?

植物の光周性をうまく利用することで、一年中きれいな花を見ることができ、いろいろなものが食べられるようになりました。また、最近はフロリゲンと呼ばれる思い通りの時期に花を咲かせる植物ホルモン(花成ホルモン)や、逆に花を咲かせないアンチフロリゲンなる物質の話もでてきて、さらにいろいろな方向に発展していくと思います。ただ、一方これで良いか、自然に逆らってはいないと少し心配にもなります。新の技術の陰で消えてしまいそうな物(文化)もあります。初めに書いた稲穂の干し方も天日干しから、コンバインで刈り取り、脱穀し、乾燥機へと変化し、その地域にあった天日干しのやり方も消滅しつつあるようです。

春に花がなかった東北のお彼岸

削り花をご存じでしょうか。最近は少なくなってきたように感じますが、春のお彼岸に供えられている木を削って着色した造花です。仙台が発祥といわれ、春彼岸に花の少ない東北地方の宮城、山形、福島等で供えられているようです。残念ながら写真はありません(興味ある方はネットで検索してください)。来春には是非写真に撮っておこうと思っています。

季節はめぐってゆきます
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ガン:秋の伊豆沼

写真は秋の夕日に飛ぶガン(伊豆沼)です。9月13日に32羽が今期初飛来したとの事です。平年より8日、昨年より9日早い飛来との事でした。昨年は10月11日時点で伊豆沼・内沼、蕪栗沼で約5万羽が渡来しており、1月から2月のピーク時に化女沼も併せて約15万羽が渡来していました。秋、ガンの季節ですね。そして冬…。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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