テクニカルノート

頑張れ!ジョロウグモ!

文:佐竹 一秀 2014年12月1日
(WEB公開:2017年12月1日)

冬のクモ
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ジョロウグモ

だいぶ冷えてきました。通勤時は手がかじかみ防寒も必須です。徒歩通勤ですので、会社までの道すがら季節の移り変わりを楽しんでいます。最近、気になるものを見つけてしまいました。それは、写真のクモです。クモの嫌いな人も少なからずいますが、その辺にいるクモは特に悪さをするわけでもないので、皆さん優しい目で見てあげて下さい。

女郎ではなかった?ジョロウグモ

種名はジョロウグモです。名前を聞いたことのある人も多いと思います。ジョロウグモは漢字で「女郎蜘蛛」と書きますので、遊女を連想してつけられた名前と思っている人も多いと思いますし、私もそう思っていました。調べてみたのですが、古い時代の身分の高い女官を上臈(ジョウロウ)と言い、それになぞらえ名づけたという説もありました。ジョロウグモの姿を雅やかで艶やかと感じ、高く評価していたようですが、名前だけで蔑まれているのでチョット可哀そうな気もします。いっそ「ミヤビグモ」とでも改名すれば、誤解されずにすんだのですが。

公園でみつけた巣

通勤途中の公園にジョロウグモのクモの巣(巣というよりは餌を捕獲するための網ですが…)が張られていました。夏にもあったのでしょうし、去年も一昨年もさらにはもっと前からも、場所は変えつつもあったのでしょうが、気になりませんでした。というより気がつきませんでした。その日は寒くて風が強く、公園内の紅葉した樹木から、風に飛ばされた枯葉がクモの巣に引っかかっていました。

こんな時期にもまだクモがいるんだと思い、少し見入ってしまいました。風に揺れる落ち葉と共に、クモの巣も大きく揺れていて、網も縦糸の何本かが切れたり、横糸も切れ穴が開いたりと、大変な状況でしたが、それでもジョロウグモはしっかりと糸にしがみついていました。可哀そうになってしまい引っかかった落ち葉を外してあげました。他の場所にもクモがいないか探したところ、道路沿いのシラカシの街路樹と植え込みのところ、二ヶ所で別の巣を見つけました。公園の巣は翌日になると少し補修されていて、クモも元気そうに見えました。(どの状態が元気なのかはわかりませんが…)。

道路沿いの一ヶ所の巣は11/13(木)の強風時には一本の縦糸のみを残して壊れてしまい、クモの姿も見えませんでした。翌14日(金)には植え込みの上面に巣を作り直しているところが見られたので一安心。ただ、土日を挟んで11/17(月)に見た時には確認できませんでした。15日(土)は強風でしたので、再び壊れたか、あるいは鳥にやられたか、はたまた子供達にいたずらされたのかもしれません。

クモの巣を虫取り網の代わりに

今の子供はクモの巣で遊ぶのでしょうか。私が子供の頃は(昭和30年台後半の話ですが)笹の先を丸くして、そこにクモの巣を引っつけて、虫取り網の代わりをさせました。あまりうまくは捕まえられませんでしたが、そこそこ遊べた気がしています。今は百円ショップで立派に使える網や虫かごが売っていますので、うらやましい限りです。11/19(水)は仙台で初霜、初氷が観測されたとのこと、寒さが一層厳しくなってきました。公園と道路沿いの1か所の巣は11/21現在、まだ大丈夫です。ただ、これから先いつまで生きていけるのでしょうか。家に連れ帰って、暖かい室内に入れてあげたいところですが、(当然、家内は猛反対するでしょうし)野生動物ですので、自然の摂理にまかせ、見守りたいと思っています。ただ12月に入ると長期出張で確認できなくなるので、どうなりますか…。

下向きなのは効率のため
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逆さまにとまる

ジョロウグモをはじめ多くの造網性のクモ類は、逆さま(下向き)になって巣の中央部に止まっています。通勤途中のクモは全てそうでした。また、ネットでクモの写真を何枚か見ましたが、それらのほとんどが下を向いていました。余計なお世話かも知れませんが、頭に血が回って朦朧としているのではないでしょうか。獲物が巣に引っかかった時には素早くその場に行って、確実に捕獲する必要があります。まごまごしているうちに、逃げられてしまいます。そのためには、下方向に移動する方が重力がありますので効率的です。であれば、下を向いていた方がより効率的と言えます。しかし世の中はそんなに甘くありません。当然クモの上側に引っかかる虫もでてきます。それら諸々を考慮すると、巣は下側を少し広くし、巣の中心よりもやや上側で下向きに止まって待つことが最も効率的となります。クモ達も色々と考え、頑張っています。そんな視点で見ると、大嫌いなクモも、チョット嫌いなクモに変わってくると思いますが、いかがでしょうか。

クモの糸には種類がある

クモの糸は「縦糸」、「横糸」、巣の外周の「枠糸」、クモが枝などから垂れ下がるときの命綱の「索引糸」、クモの巣と周辺の木の枝等を結ぶ「繋留糸」、繋留糸や検索糸と枝の接合部分の「付着盤糸」など、様々な用途のものがあります。それぞれ、粘性や強度などが違います。これらを数種類の糸を一匹のクモが体内から作り出します。体の中に紡績工場を持っている事になります。凄い奴らです。

糸の強度やその利用についても、いろいろと面白い話がありますが、今回のクモの話はここまでとさせていただきます。野外のクモ達と同様に(世間の)冷たい風に飛ばされそうですが、あちらこちらに張った糸(人)に助けてもらいながら、来年も頑張って行こうと思っています。

公園のクモたちのその後…
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コガネグモ

さて、その後の公園と道路沿いのジョロウグモの状況です。11/22(土)仕事は休みだったので、夜に見に行きました。暖かな一日だったので、問題ないと気軽な気持ちで行ったのですが、公園のクモの姿が見えません。巣も糸もあちらこちらで切れていて…。道路沿いのクモの方は元気でいました。翌日曜日は、終日外出していて確認できずにいました(土曜日に元気でいれば見に行ったかもしれませんが、だめだと思っていましたので)。翌11/24(月)は勤労感謝の日の振休。仕事を片づけようと午前中に会社に行きました。ダメもとで公園を見たところ、巣の中央部に逆さまの姿がありました。元気を取り戻したようで、巣もしっかりと修復されていました。

今は11/25(火)の朝です。本原稿の〆をとっくに過ぎていますので、これ以上観察記録を紙面に載せられません。残念ですが、観察記録はここまでとなります。今朝もしっかりと巣の中央部で頑張っていました。が、既に雨が降りだし明日も降り続くとの予報です。無情の冷たい雨です。二ヶ所共に常緑樹の下にある巣なので、多少の雨は避けられるかもしれませんが…。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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