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三社合同安全講習会実施報告

2024年1月15日
文:環境調査課 合田 爽馬

実施背景

2023年12月22日午後、株式会社地域環境計画さん、FRSコーポレーション株式会社さんとエコリスの三社合同で安全講習会を実施いたしました。自然環境調査を行ううえで現場での安全管理はどの調査会社でも大きな課題となっています。今回の講習会は会社の垣根を越えて現場の安全性を高めていこうという思いのもと、初の試みとして開催されました。講師は応急手当や救命措置についての知識をお持ちである株式会社地域環境計画の嘉藤様に務めていただき、講師を含めて計31名が参加しました。本記事では講習会の様子とその内容についてご報告いたします。

会場の様子

応急手当の練習

まず初めに、出血、骨折、熱中症、低体温症の対処法について実技を交えながらレクチャーしていただきました。

出血の処置では直接圧迫止血法についてご説明いただき、傷口にガーゼを当て、ビニール袋等を使用して血液には触れずに圧迫するという、具体的な手順を学びました。また、傷口に枝などの大きなものが刺さっている場合は無理には取り除くと出血がさらに悪化する可能性があるとのことでした。傷口の洗浄方法として、水の入ったペットボトルに穴の開いたキャップで蓋をし、ジョウロのように水を出して洗う方法も紹介されました。骨折等の処置として三角巾を用いて固定する方法もご説明いただき、三角巾のたたみ方や腕・足首の固定方法などをペアになって練習しました。骨折箇所の添え木として使えるものについても意見が交わされ、木の枝や傘、紅白ポール、三脚、野帳の束など、現場をイメージしながら様々な案が飛び出しました。

足首の固定方法の解説

熱中症・低体温症については症状と重症度に応じた対処法を解説していただきました。特に熱中症については、体を冷やす道具として冷凍されたペットボトル飲料や氷を入れた水筒、瞬間冷却パック等が紹介されました。また、嘉藤様からは周囲の人が症状を確認する際は「大丈夫?」と聞かず、具体的な質問を投げかけることで傷病者が状態を正直に答えやすくなるというアドバイスもいただきました。

シナリオトレーニング

応急手当の基本を学んだ後は、参加者が5人で1つの班をつくり、傷病者役、救助者役、記録係に分かれて救急救命のシナリオトレーニングを行いました。現場経験が豊富な社員が各班に一人ずつコーチとして付き、シナリオの説明やアドバイスをしながらトレーニングを主導しました。各シナリオは傷病者役が症状を紙に記入し、救助者役に見せるところから始まります。救助者役は現場に持っていくものを書いたアイテムカードのなかから、使えそうなものを選んで対処しました。

シナリオ1:熱中症

最初のシナリオは「5人のうち2人が熱中症になる」というものでした。2名の傷病者は一人が立ちくらみを起こし、もう一人は頭痛や嘔吐などの症状が出ています。吐き気や嘔吐、意識障害などの症状があるような重度の熱中症になってしまった場合は水を飲むと誤って気道に水分が流れ込んでしまう可能性があるため、水分補給を控え、救助者がすぐに救助要請しなければいけません。また、傷病者の体を冷やすのに冷凍されたペットボトル飲料を使えば、使用後に軽症の熱中症患者の水分補給に使うこともできます。傷病者の重症度に応じて対処方法を考えることで、参加者は講習の前半に学んだ応急処置を復習することができました。嘉藤様の解説ではレスキューシートを用いて日陰を作る方法が紹介され、意外な活用法に驚く参加者もいました。

シナリオ2:ハチ・刺傷

2つ目のシナリオは「5人のうち一人の調査員がハチに刺されてアナフィラキシーショックを起こし、さらにもう一人が刺傷を負う」というものでした。この場合、まずはハチがいない場所に移動し、用意があればハチ撃退スプレー等を使用することで安全な状況をつくらなければいけません。そしてハチに刺された調査員にはポイズンリムーバーやエピペンで処置をし、刺傷を負ったもう一人の傷病者には止血等の対処を行います。応急手当の分担や優先順位の付け方が難しいシナリオでした。実際に各自が所有するポイズンリムーバーを使って処置を行う練習もしたため、ポイズンリムーバーのタイプごとの使い方を知り、練習を行う良い機会にもなりました。

ポイズンリムーバーの使い方を確認

シナリオ3:滑落

最後のシナリオは「日没が近い時間に2人が沢を滑落し、一人が腕を骨折、もう一人が背中を強打して脊髄を損傷する」というシビアなものでした。この場合はむやみに傷病者に近づこうとすると、滑落し、さらなる事故を生んでしまう可能性もあるため、救助者には慎重な判断が求められます。参加者によっては一人が救助を呼びに行ったり、ロープを使って救助に向かったり、その場で夜明けを待つ判断をしたりと、対応について様々な意見が出ました。嘉藤様からは、「救助の原則は無理をしないこと」というアドバイスがあり、多くの参加者が個々の能力や状況に応じて適切な判断を下すことの難しさを感じていました。実際に滑落事故の現場に遭遇したことのある参加者からは、「救助要請する際に、電話で事情を正確に伝えるのが難しかった」という話もありました。

応急手当の練習

シナリオトレーニングを通して、参加者からは「実際の事故で同様の判断ができるのか不安だ」「状況に応じた判断が難しい」といった感想が出ました。

最後に

今回の講習は、応急手当の基礎を理解したうえで実際の事故をイメージすることで、現場の安全や応急手当の重要さについて見つめ直す良い機会となりました。しかし、参加者の中からは、応急手当の基本を知ることができても、実際の事故で適切に対応できるか自信がないという声も挙がっています。講習会の最後は、嘉藤様からの「救命方法は更新されていくものなので、今回の講習に限らず、常に新しい情報を吸収して事故に備えてほしい」という言葉で締めくくられました。

開催にあたり、中心となってご尽力いただいた株式会社地域環境計画の嘉藤様、FRSコーポレーション株式会社の菰田様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

※当日の午前には登樹方法・人工巣ワークショップも実施されました。その様子はこちらからご覧ください。

登樹方法・人工巣ワークショップ実施報告

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