1.旅の目的
ニュージーランドから日本までの西太平洋を、1ヶ月かけて縦断する壮大なクルーズがあると知ったのは2008年のこと。このクルーズ自体は、2007~2013年・2015~2016年に行われており、ニュージーランドからパプアニューギニアまでの年もありつつ、基本的にはニュージーランドから日本までのクルーズとして催行されてきました。主に海鳥を見ることを目的に企画されているクルーズで、日本で普段見られる海鳥は勿論のこと、記録の少ない迷鳥や今後に出現が期待される種、一度は絶滅したと考えられていたような希少な海鳥の観察機会もあり、ずっとずっと、参加を夢見てきました。さすがの長旅ですから、参加を決意するまでには色々と葛藤もありましたが、社員の皆様に背中を押してもらい、旅立つことが出来ました。
このクルーズに参加する上で、私たちがターゲットとしていた種は、ソロモンミズナギドリ、ビスマルクミズナギドリ、パプアニューギニア付近で確認例があるフィジーミズナギドリに似た未記載種、ソロモンクロコシジロウミツバメ、ニューカレドニアウミツバメです。これらの種は、一度は絶滅したと考えられていたものの近年になって再発見された種、これまで生息が知られていなかった種で、その生態のほとんどは謎に包まれています。どうしても見たい、あわよくば近くで見たい、写真やビデオにおさめたい、分布域解明の一助になりたい、識別のポイントを見つけたい…。そんな情熱を胸に宿した私たちを含む熱心なバードウォッチャー40人を乗せ、船は進みます。
2.旅の概要
--- 行程 ---
ニュージーランド南島のクライストチャーチにて、南極の旅から下船した後、北島へ移動し、2019年3月15日にタウランガから出港しました。そして、4月14日に横浜の山下ふ頭に入港し、31日間におよぶ船旅を終えました。旅の行程中には、オーストラリア領ノーフォーク島、ニューカレドニア、ソロモン諸島、ミクロネシア連邦といった西太平洋の島々を訪れ、陸鳥の固有種を中心に観察したほか、洋上航行中はガイドとともに終日海鳥の観察を行いました。なお、日本の小笠原諸島母島、伊豆諸島三宅島にも上陸予定でしたが、残念ながら海況不良のために上陸はかないませんでした。
旅程
--- 船について ---
南極への旅と同様のProfessor Khromovに乗船しました。
船の詳細については、「第二回 南極への旅」をご覧ください。
--- 持ち物 ---
温帯~熱帯の地域を通りますので、服装は基本的には軽装で十分ですが、船上では風が冷たいこともあるので、体温調整のしやすい服装がよいでしょう。衣服の色への陸鳥の忌避反応については、様々議論があるところですが、上陸しての探鳥時にはあまり目立たない色の衣服を選んだほうがよいでしょう。
●持ち物リスト
- スーツケース…船室の広さによるが、片面開きのものが◎
- 半袖シャツ
- 長袖シャツ…日焼け、虫刺され防止
- 半ズボン
- 長ズボン…日焼け、虫刺され防止、主に上陸時に着用
- 靴下
- キャップorハット
- サングラス
- サンダル…船内や浅瀬に上陸する時に使用
- トレッキングシューズ
- ザック
- 水筒
- 洗濯ロープ…汗をかくので、洗濯頻度高い
- カッパ…雨天時の他肌寒い日のアウターとして
- 折り畳み傘…スコールも多いので必携
- 酔い止め…必須
- 虫よけ…上陸し林内を歩く際に必要
- 日焼け止め
- 常備薬
- パソコン…写真を保管するために外付けHDD等もあると便利
- メモ帳
- 図鑑
- 双眼鏡
- (スコープ・三脚)…上陸時に使用機会もある
- カメラ・レンズ
- 予備カメラ・レンズ
- カップ麺・お菓子・カロリーメイト等…船酔いで部屋から動けない時に
- 現地通貨
- 上陸国のビザ
- パスポート
3.海鳥の観察
31日間の行程の内、21日間は終日洋上で海鳥を観察しました。幸いなことに、この年はサイクロンに遭うこともなく、行程の大部分は穏やかな海況で、船酔いもほとんどありませんでした。一方、最も穏やかだと聞いていた赤道付近は意外にも波風があり、小笠原諸島及び伊豆諸島周辺では低気圧の影響により風が強く、風浪により船体が動揺する場面もありました。
下部前方デッキで観察を行うバードウォッチャー達
普段は見に行くすべがない鳥島をバックに飛ぶアホウドリ
今回の海鳥の出現傾向としては、過去の結果と比較して、
①Collared Petrel(カワリヒメシロハラミズナギドリ)の出現数が多く、Magnificent Petrel(カワリヒメミズナギドリ・暗色型)も過去最多の出現数だった。また、ニュージーランドの海域でも淡色型1個体・暗色型1個体が出現し、このうち暗色型はニュージーランド初記録となった。
②このツアーでは初めてフィジーミズナギドリ(Fiji Petrel)が確認された(ニュージーランド初記録)。
③Kermadec Petrel(カワリシロハラミズナギドリ)の出現数が少なかった。
といった違いがありました。これらの要因の一つとしては、前年から続くエルニーニョ現象の影響で、航行した海域の多くの場所で海水温度が高かったことが考えられます。
本当にたくさんの海鳥を観察することができ、どこから紹介すべきか迷ってしまうほどですが…、まずは、洋上での確認種と主に見られた海域を表1に示します。
No. | 学名 | 英名 | 和名 | 主に見られた海域 |
---|---|---|---|---|
1 | Phalaropus lobatus | Red-necked Phalarope | アカエリヒレアシシギ | |
2 | Phalarope sp. | ヒレアシシギsp. | ||
3 | Anous stolidus | Brown Noddy | クロアジサシ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
4 | Anous minutus | Black Noddy | ヒメクロアジサシ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
5 | Anous albivitta | Grey Noddy | ウスハイイロアジサシ(仮称) | ニュージーランドからノーフォーク島までの海域で確認 ニュージーランド北島沖のMaori Rocksではコロニーを観察 |
6 | Gygis alba | White Tern | シロアジサシ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
7 | Chroicocephalus novaehollandiae | Silver Gull | ギンカモメ | ニュージーランド北島周辺 |
8 | Larus crassirostris | Black-tailed Gull | ウミネコ | 東京湾周辺 |
9 | Larus dominicanus | Kelp Gull | ミナミオオセグロカモメ | ニュージーランド北島周辺 |
10 | Larus schistisagus | Slaty-backed Gull | オオセグロカモメ | 東京湾周辺 |
11 | Thalasseus bergii | Greater Crested Tern | オオアジサシ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
12 | Sternula albifrons | Little Tern | コアジサシ | ソロモン諸島沖 |
13 | Onychoprion lunatus | Spectacled Tern | ナンヨウマミジロアジサシ | ソロモン諸島沖とチューク諸島沖で計2個体 |
14 | Onychoprion anaethetus | Bridled Tern | マミジロアジサシ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
15 | Onychoprion fuscatus | Sooty Tern | セグロアジサシ | ニュージーランド沖~小笠原沖の広い範囲 |
16 | Sterna striata | White-fronted Tern | シロビタイアジサシ | ニュージーランド北島周辺 |
17 | Sterna sumatrana | Black-naped Tern | エリグロアジサシ | チューク諸島沖 |
18 | Sterna hirundo | Common Tern | アジサシ | ソロモン諸島沖 |
19 | Skuas pomarinus | Pomarine Jaeger | トウゾクカモメ | ニュージーランド~日本沖の広い範囲で断続的 |
20 | Skuas parasiticus | Parasitic Jaeger | クロトウゾクカモメ | ニュージーランド~小笠原諸島の南沖の広い範囲で断続的 |
21 | Skuas longicaudus | Long-tailed Jaeger | シロハラトウゾクカモメ | ニュージーランド~小笠原諸島の南沖の広い範囲で断続的 |
22 | Jaeger sp. | トウゾクカモメsp. | ||
23 | Brachyramphus perdix | Long-billed Murrelet | マダラウミスズメ | 三宅島~館山沖の間で2個体 |
24 | Synthliboramphus wumizusume | Japanese Murrelet | カンムリウミスズメ | 三宅島沖 |
25 | Phaethon rubricauda | Red-tailed Tropicbird | アカオネッタイチョウ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
26 | Phaethon lepturus | White-tailed Tropicbird | シラオネッタイチョウ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
27 | Oceanites oceanicus | Wilson's Storm Petrel | アシナガウミツバメ | ニュージーランド沖、ニューカレドニア沖 |
28 | Pelagodroma marina | White-faced Storm Petrel | カオジロウミツバメ | ニュージーランド沖 |
29 | Fregetta maoriana | New Zealand Storm Petrel | ニュージーランドウミツバメ(仮称) | ニュージーランド沖 |
30 | New Caledonia Storm Petrel | ニューカレドニアウミツバメ(仮称) | ニューカレドニア沖 | |
31 | Phoebastria immutabilis | Laysan Albatross | コアホウドリ | 小笠原諸島沖 |
32 | Phoebastria nigripes | Black-footed Albatross | クロアシアホウドリ | 小笠原諸島~三宅島沖 |
33 | Phoebastria albatrus | Short-tailed Albatross | アホウドリ | 小笠原諸島~三宅島沖 |
34 | Diomedea (antipodensis) gibsoni | (Gibson's Albatross) | ギブソンアホウドリ(仮称) | ニュージーランド沖 |
35 | Diomedea sanfordi | Northern Royal Albatross | キタシロアホウドリ(仮称) | ニュージーランド沖 |
36 | Thalassarche (cauta) steadi | Shy Albatross | ハジロアホウドリ | ニュージーランド沖 |
37 | Thalassarche bulleri | Buller's Albatross | ニュージーランドアホウドリ | ニュージーランド沖 |
38 | Oceanodroma castro | Band-rumped Storm Petrel | クロコシジロウミツバメ | ニューカレドニアとソロモン諸島の間の海域(繁殖地不明) |
39 | Oceanodroma leucorhoa | Leach's Storm Petrel | コシジロウミツバメ | ノーフォーク島とニューカレドニアの間の海域、マリアナ諸島~小笠原諸島沖 |
40 | Oceanodroma tristrami | Tristram's Storm Petrel | オーストンウミツバメ | 小笠原諸島~伊豆諸島鳥島沖 |
41 | Oceanodroma matsudairae | Matsudaira's Storm Petrel | クロウミツバメ | マリアナ諸島~小笠原諸島沖 |
42 | Pachyptila turtur | Fairy Prion | ヒメクジラドリ | ニュージーランド沖 |
43 | Pterodroma gouldi | Grey-faced Petrel | ハイガオミズナギドリ | ニュージーランドとノーフォーク島の間の海域 |
44 | Pterodroma solandri | Providence Petrel | ハジロミズナギドリ | ノーフォーク島~ソロモン諸島の南沖で断続的、伊豆諸島鳥島沖 |
45 | Pterodroma occulta | Vanuatu Petrel | バヌアツミズナギドリ | ニューカレドニアとソロモン諸島の間の海域 |
46 | Pterodroma neglecta | Kermadec Petrel | カワリシロハラミズナギドリ | ニュージーランド~ニューカレドニア沖で断続的に計7個体 |
47 | Pterodroma cervicalis | White-necked Petrel | クビワオオシロハラミズナギドリ | ニュージーランド~ノーフォーク島沖 |
48 | Pterodroma nigripennis | Black-winged Petrel | ハグロシロハラミズナギドリ | ニュージーランド~ニューカレドニア沖 |
49 | Pterodroma hypoleuca | Bonin Petrel | シロハラミズナギドリ | マリアナ諸島~三宅島沖 |
50 | Pterodroma leucoptera | Gould's Petrel | ミナミシロハラミズナギドリ | ニュージーランド沖とニューカレドニア沖 |
51 | Pterodroma brevipes | Collared Petrel | カワリヒメシロハラミズナギドリ | ニュージーランド~ニューカレドニア沖で断続的に計11個体(内6個体が暗色型) |
52 | Pterodroma cookii | Cook's Petrel | ハジロシロハラミズナギドリ | ニュージーランド沖 |
53 | Pterodroma pycrofti | Pycroft's Petrel | ウスヒメシロハラミズナギドリ | ニュージーランド沖 |
54 | Pseudobulweria rostrata | Tahiti Petrel | セグロシロハラミズナギドリ | ノーフォーク島~ニューカレドニア沖 |
55 | Pseudobulweria becki | Beck's Petrel | ソロモンミズナギドリ | パプアニューギニア沖、館山沖(写真無し) |
56 | Pseudobulweria macgillivrayi | Fiji Petrel | フィジーミズナギドリ | ニュージーランド沖で1個体 |
57 | Pseudobulweria parkinsoni | Black Petrel | クロミズナギドリ | ニュージーランド沖 |
58 | Calonectris leucomelas | Streaked Shearwater | オオミズナギドリ | ソロモン諸島とミクロネシアの間の海域、小笠原諸島~館山沖 |
59 | Ardenna pacifica | Wedge-tailed Shearwater | オナガミズナギドリ | ニュージーランド~伊豆諸島鳥島沖の広い範囲 |
60 | Ardenna bulleri | Buller's Shearwater | ミナミオナガミズナギドリ | ニューカレドニア沖 |
61 | Ardenna tenuirostris | Short-tailed Shearwater | ハシボソミズナギドリ | 小笠原諸島~三宅島沖 |
62 | Ardenna carneipes | Flesh-footed Shearwater | アカアシミズナギドリ | ニュージーランド~伊豆諸島鳥島沖の広い範囲で断続的 |
63 | Puffinus nativitatis | Christmas Shearwater | コミズナギドリ | 北マリアナ諸島沖 |
64 | Puffinus gavia | Fluttering Shearwater | ミナミミズナギドリ | ニュージーランド沖 |
65 | Puffinus (bailloni) dichrous | Tropical Shearwater | メラネシアネッタイミズナギドリ | ソロモン諸島沖 |
66 | Puffinus (bailloni) gunax | Tropical Shearwater | ミクロネシアネッタイミズナギドリ | ミクロネシア沖 |
67 | Puffinus bannermani | Bannerman's Shearwater | オガサワラミズナギドリ | 硫黄列島~小笠原諸島沖 |
68 | Puffinus heinrothi | Heinroth's Shearwater | ビスマルクミズナギドリ | ソロモン諸島~パプアニューギニア沖 |
69 | Puffinus assimilis | Little Shearwater | ヒメミズナギドリ | ニュージーランド~ノーフォーク島南沖 |
70 | Pelecanoides urinatrix | Common Diving Petrel | モグリウミツバメ | ニュージーランド沖 |
71 | Bulweria bulwerii | Bulwer's Petrel | アナドリ | ミクロネシア~小笠原諸島沖で断続的 |
72 | ? | Lava Petrel | ? | ソロモン諸島~ニューカレドニアの間で3個体 |
73 | Fregata minor | Great Frigatebird | オオグンカンドリ | 熱帯海域の広い範囲 |
74 | Fregata ariel | Lesser Frigatebird | コグンカンドリ | 熱帯海域の広い範囲(オオグンカンドリと比べ少ない) |
75 | Morus serrator | Australasian Gannet | オーストラリアシロカツオドリ | ニュージーランド沖 |
76 | Sula dactylatra dactylatra | Masked Booby | アオツラカツオドリ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
77 | Sula (dactylatra) tasmani | Tasman Booby | タスマニアカツオドリ(仮称) | ノーフォーク島沖 |
78 | Sula sula | Red-footed Booby | アカアシカツオドリ | 熱帯~亜熱帯海域の広い範囲 |
79 | Sula (leucogaster) brewsteri | Brewster's Brown Booby | シロガシラカツオドリ(仮称) | |
80 | Sula (leucogaster) plotus | Indo-Pacific Brown Booby | カツオドリ | ニューカレドニア~三宅島沖の広い範囲 |
81 | Microcarbo melanoleucos | Little Pied Cormorant | シロハラコビトウ | ニュージーランド出港時 |
82 | Phalacrocorax pelagicus | Pelagic Cormorant | ヒメウ | 三宅島周辺 |
83 | Phalacrocorax varius | Australian Pied Cormorant | マミジロウ(仮称) | ニュージーランド出港時 |
84 | Phalacrocorax capillatus | Japanese Cormorant | ウミウ | 三宅島周辺 |
- ※種名及び配列は、基本的にIOC World Bird List version9.2 (IOC World Bird List, 2019)に準拠した。
- ※和名は、日本で記録がある種については「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会 2012年)に従った。記録がない種については、山階鳥類研究所標本データベースで公開されている「『世界鳥類和名辞典』(山階 1986)とIOC World Bird List 3.2の分類体系の比較結果」(参照日:2020-10-1)に従った他、英名を参考に仮称として記載した。
※以下、鳥の写真はクリックで拡大します
4.陸鳥の観察
途中立ち寄る島への上陸予定の前日には、ガイドチームから行程や注意点、見られる可能性がある鳥についてのレクチャーがあります。陸鳥は早朝のほうが観察しやすい場合が多いため、船を出発するのは夜明け前…ということも多くありました。海鳥に全力を注ぎたい人は、陸鳥はパス…という戦略もありですが、自力で行くには困難な遠隔地も含まれますので、上陸してみることをお勧めします。上陸した地域ごとの主な見どころを以下に、陸上での確認種を表2に示します。
ノーフォーク島(オーストラリア領)
地域の旗にもなっているノーフォークマツという円錐形の樹形がきれいな木に覆われた、穏やかな島です。ここでのメインターゲットとなっているアオハシインコの亜種C. n. cookiiはノーフォーク島にのみ生息し、独立種とする説もあります。ノネコやクマネズミによる捕食、アカクサインコやホシムクドリなどとの巣穴の競合といった影響から、個体数が減少しており、絶滅が心配されています。上述した種は全て外来種であり、離島での外来種問題は様々な場所で起こっていると感じさせられます。
ニューカレドニア
2日間上陸し、固有種を中心に多くの陸鳥を観察しました。ニューカレドニアといえば、国鳥にもなっている飛べない鳥カグーが有名です。国立公園のレンジャーの方と一緒に散策路を歩いていると、林内から現れ、こちらをあまり気にする様子もなく散策路脇で採餌していました。淡い灰色の羽毛と長い冠羽、鮮やかな赤い嘴が大変美しい鳥でした。カグーの正確な個体数は把握されていませんが、猟犬やドブネズミ、ブタといった外来種による捕食圧があり、減少が心配されています。
ソロモン諸島
5日間かけ5つの島に上陸しました。ヒタキやメジロの仲間では、島ごとに異なる種が分布しており、その多様性に感動しました。また、現地の方との交流も非常に楽しいひと時でした。船の寄港は一大イベントのようで、上陸前に船上で待機している間から、カヤックに乗った方々が興味深げにこちらを眺めていました。島に上陸すると、原住民風(?)の衣装で出迎えてくれたり、歌や花飾り、ココナッツで歓迎してくれたりと、とても温かいもてなしを受けました。こちらからも、英語でお話ししたり、図鑑を見せたり、参加費に含まれていた寄付金で購入した本を小学校に寄贈したりと、お互いに交流を図る貴重な機会となりました。
ミクロネシア連邦カロリン諸島チューク諸島
チューク諸島のウェノ島とトル島に上陸し、主にトル島でカワリヒタキとアカアシメジロという2種のスターバードを観察しました。ウェノ島の市街地には、日本人名がついた商店があったり、道端でコンニチハと挨拶されたりと、戦時中の日本統治時代の面影を感じさせる部分もありました。
上陸時には船上や港で検疫探知犬によるチェックを
受ける(ノーフォーク島)本を寄贈した小学校(ソロモン諸島Yanuta島)
No. | 科名 | 学名 | 英名 | 和名 |
---|---|---|---|---|
1 | Megapodiidae | Megapodius eremita | Melanesian Megapode | メラネシアツカツクリ(仮称) |
2 | Odontophoridae | Callipepla californica | California Quail | カンムリウズラ |
3 | Anatidae | Anas superciliosa | Pacific Black Duck | マミジロカルガモ |
4 | Hemiprocnidae | Hemiprocne mystacea | Moustached Treeswift | シラヒゲカンムリアマツバメ |
5 | Apodidae | Collocalia esculenta | Glossy Swiftlet | シロハラアナツバメ |
6 | Collocalia uropygialis | Satin Swiftlet | サテンアナツバメ(仮称) | |
7 | Aerodramus spodiopygius | White-rumped Swiftlet | コシジロアナツバメ | |
8 | Aerodramus vanikorensis | Uniform Swiftlet | ムジアナツバメ | |
9 | Cuculidae | Centropus milo | Buff-headed Coucal | キガシラバンケン |
10 | Columbidae | Columba vitiensis | Metallic Pigeon | アカメカラスバト |
11 | Spilopelia chinensis | Spotted Dove | カノコバト | |
12 | Ptilinopus richardsii | Silver-capped Fruit Dove | ギンボウシヒメアオバト | |
13 | Ptilinopus viridis | Claret-breasted Fruit Dove | ムネアカヒメアオバト | |
14 | Ducula pistrinaria | Island Imperial Pigeon | メラネシアミカドバト | |
15 | Gymnophaps solomonensis | Pale Mountain Pigeon | ソロモンミヤマバト | |
16 | Rallidae | Porphyrio melanotus | Australasian Swamphen | オーストラリアセイケイ(仮称) |
17 | Charadriidae | Pluvialis fulva | Pacific Golden Plover | ムナグロ |
18 | Scolopacidae | Arenaria interpres | Ruddy Turnstone | キョウジョシギ |
19 | Tringa incana | Wandering Tattler | メリケンキアシシギ | |
20 | Rhynochetidae | Rhynochetos jubatus | Kagu | カグー |
21 | Ardeidae | Bubulcus coromandus | Eastern Cattle Egret | アマサギ |
22 | Ardea cinerea | Grey Heron | アオサギ | |
23 | Ardea alba | Great Egret | ダイサギ | |
24 | Egretta novaehollandiae | White-faced Heron | カオジロサギ | |
25 | Egretta sacra | Pacific Reef Heron | クロサギ | |
26 | Pandionidae | Pandion cristatus | Eastern Osprey | ミサゴ |
27 | Accipitridae | Accipiter hiogaster | Variable Goshawk | カワリオオタカ(仮称) |
28 | Accipiter albogularis | Pied Goshawk | ノドジロオオタカ | |
29 | Accipiter haplochrous | White-bellied Goshawk | ムナグロオオタカ | |
30 | Haliastur sphenurus | Whistling Kite | フエフキトビ | |
31 | Haliastur indus | Brahminy Kite | シロガシラトビ | |
32 | Haliaeetus sanfordi | Sanford's Sea Eagle | ソロモンウミワシ | |
33 | Butastur indicus | Grey-faced buzzard | サシバ | |
34 | Buteo japonicus | Eastern Buzzard | ノスリ | |
35 | Bucerotidae | Rhyticeros plicatus | Blyth's Hornbill | パプアシワコブサイチョウ |
36 | Coraciidae | Eurystomus orientalis | Oriental Dollarbird | ブッポウソウ |
37 | Alcedinidae | Todiramphus leucopygius | Ultramarine Kingfisher | ルリショウビン |
38 | Todiramphus sacer | Pacific Kingfisher | タイヘイヨウショウビン(仮称) | |
39 | Todiramphus saurophagus | Beach Kingfisher | シロガシラショウビン | |
40 | Todiramphus sanctus | Sacred Kingfisher | ヒジリショウビン | |
41 | Falconidae | Falco severus | Oriental Hobby | ミナミチゴハヤブサ |
42 | Cacatuidae | Cacatua ducorpsii | Solomons Cockatoo | ソロモンオウム |
43 | Psittaculidae | Geoffroyus heteroclitus | Song Parrot | キガシラインコ |
44 | Platycercus elegans | Crimson Rosella | アカクサインコ | |
45 | Cyanoramphus saisseti | New Caledonian Parakeet | ニューカレドニアインコ(仮称) | |
46 | Cyanoramphus cookii | Norfolk Parakeet | ノーフォークインコ(仮称) | |
47 | Charmosyna margarethae | Duchess Lorikeet | キフジンインコ | |
48 | Lorius chlorocercus | Yellow-bibbed Lory | ヨダレカケズグロインコ | |
49 | Trichoglossus haematodus | Coconut Lorikeet | ゴシキセイガイインコ | |
50 | Meliphagidae | Myzomela caledonica | New caledonian Myzomela | ニューカレドニアミツスイ(仮称) |
51 | Myzomela rubratra | Micronesian Myzomela | ミクロネシアミツスイ(仮称) | |
52 | Myzomela eichhorni | Crimson-rumped Myzomela | コシアカミツスイ | |
53 | Myzomela tristrami | Sooty Myzomela | ソロモンミツスイ | |
54 | Philemon diemenensis | New Caledonian Friarbird | カレドニアハゲミツスイ | |
55 | Gymnomyza aubryana | Crow Honeyeater | オオミツスイ | |
56 | Glycifohia undulata | Barred Honeyeater | ヨコジマミツスイ | |
57 | Acanthizidae | Gerygone modesta | Norfolk Gerygone | ノーフォークセンニョムシクイ(仮称) |
58 | Gerygone flavolateralis | Fan-tailed Gerygone | カレドニアセンニョムシクイ | |
59 | Artamidae | Artamus leucorynchus | White-breasted Woodswallow | モリツバメ |
60 | Campephagidae | Coracina lineata | Barred Cuckooshrike | ヨコジマカッコウサンショウクイ |
61 | Coracina caledonica | South Melanesian Cuckooshrike | メラネシアオニサンショウクイ | |
62 | Coracina papuensis | White-bellied Cuckooshrike | パプアオオサンショウクイ | |
63 | Edolisoma anale | New Caledonian Cuckooshrike | カレドニアオオサンショウクイ | |
64 | Lalage leucopyga | Long-tailed Triller | オナガナキサンショウクイ | |
65 | Pachycephalidae | Pachycephala pectoralis xanthoprocta | Australian Golden Whistler | キバラモズヒタキ |
66 | Pachycephala caledonica | New Caledonian Whistler | ニューカレドニアモズヒタキ(仮称) | |
67 | Pachycephala rufiventris | Rufous Whistler | アカハラモズヒタキ | |
68 | Rhipiduridae | Rhipidura leucophrys | Willie Wagtail | ヨコフリオウギビタキ |
69 | Rhipidura albiscapa | Grey Fantail | ハイイロオウギビタキ(仮称) | |
70 | Rhipidura verreauxi | Streaked Fantail | タテフオウギビタキ | |
71 | Rhipidura rufifrons | Rufous Fantail | オウギビタキ | |
72 | Monarchidae | Clytorhynchus pachycephaloides | Southern Shrikebill | カレドニアオオハシヒタキ |
73 | Metabolus rugensis | Chuuk Monarch | カワリヒタキ | |
74 | Monarcha Symposiachrus | Solomons Monarch | マダラカササギビタキ | |
75 | Monarcha castaneiventris megarhynchus | Chestnut-bellied Monarch | チャバラカササギビタキ | |
76 | Monarcha richardsii | White-capped Monarch | ソロモンカササギビタキ | |
77 | Myiagra ferrocyanea | Steel-blue Flycatcher | アオヒラハシ | |
78 | Myiagra cervinicauda | Makira Flycatcher | マキラヒラハシ(仮称) | |
79 | Myiagra caledonica | Melanesian Flycatcher | カレドニアヒラハシ | |
80 | Corvidae | Corvus moneduloides | New Caledonian Crow | カレドニアガラス |
81 | Corvus macrorhynchos | Large-billed Crow | ハシブトガラス | |
82 | Petroicidae | Cryptomicroeca flaviventris | Yellow-bellied Flyrobin | カレドニアキバラヒタキ |
83 | Petroica multicolor | Norfolk Robin | ノーフォークヒタキ(仮称) | |
84 | Pycnonotidae | Pycnonotus cafer | Red-vented Bulbul | シリアカヒヨドリ |
85 | Hirundinidae | Hirundo rustica | Barn Swallow | ツバメ |
86 | Hirundo tahitica | Pacific Swallow | リュウキュウツバメ | |
87 | Hirundo neoxena | Welcome Swallow | オーストラリアツバメ(仮称) | |
88 | Cecropis daurica | Red-rumped swallow | コシアカツバメ | |
89 | Zosteropidae | Rukia ruki | Teardrop White-eye | アカアシメジロ |
90 | Zosterops kulambangrae | Solomons White-eye | ソロモンメジロ | |
91 | Zosterops tetiparius | Dark-eyed White-eye | テテパレメジロ(仮称) | |
92 | Zosterops xanthochroa | Green-backed White-eye | カレドニアメジロ | |
93 | Zosterops lateralis | Silvereye | ハイムネメジロ | |
94 | Zosterops tenuirostris | Slender-billed White-eye | ハシボソメジロ | |
95 | Sturnidae | Aplonis metallica | Metallic Starling | オナガテリカラスモドキ |
96 | Aplonis cantoroides | Singing Starling | ナキカラスモドキ | |
97 | Aplonis grandis | Brown-winged Starling | オオカラスモドキ | |
98 | Aplonis striata | Striated Starling | カレドニアカラスモドキ | |
99 | Mino kreffti | Long-tailed Myna | オナガムクドリ(仮称) | |
100 | Acridotheres tristis | Common Myna | カバイロハッカ | |
101 | Sturnus vulgaris | Common Starling | ホシムクドリ | |
102 | Turdidae | Turdus cardis | Japanese Thrush | クロツグミ |
103 | Turdus merula | Common Blackbird | クロウタドリ | |
104 | Nectariniidae | Cinnyris jugularis | Olive-backed Sunbird | キバラタイヨウチョウ |
105 | Passeridae | Passer domesticus | House Sparrow | イエスズメ |
- ※種名及び配列は、基本的にIOC World Bird List version9.2 (IOC World Bird List, 2019)に準拠した。
- ※和名は、日本で記録がある種については「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会 2012年)に従った。記録がない種については、山階鳥類研究所標本データベースで公開されている「『世界鳥類和名辞典』(山階 1986)とIOC World Bird List 3.2の分類体系の比較結果」(参照日:2020-10-1)に従った他、英名を参考に仮称として記載した。
5.今回の成果
観察できた海鳥の内、ターゲットにしていた種、新たな知見が得られた種について、簡単にですが成果を以下に記します。
① Collared Petrel・Magnificent Petrel(カワリヒメシロハラミズナギドリ)
バヌアツやフィジーなどで繁殖が確認されていますが、その生態はほとんど分かっていません。腹部が白い個体から暗灰色の個体まで、その体色には個体差が大きく、このうちバヌアツ北部で繁殖する腹部の黒いMagnificent Petrelと呼ばれる個体群は、その名に劣らないとても綺麗なミズナギドリで、2009年にバヌアツのバンクス諸島での再発見が報じられた時から見たいと望んでいた種でした。なお、Magnificent Petrelについては、Collared Petrelの亜種または別種とする考えがありますが、この種(または亜種)について疑問視する意見もあります。
幸運にも今回のクルーズでは過去最多の10個体を観察し、このうち6個体はこのMagnificent Petrelでした。双眼鏡の視界に本種が入るととにかく黒い、という印象を受けました。Collared Petrelよりも僅かに小さく見え、風の条件に関わらず海面近くの低いところを飛翔することが多かったです。
② Fiji Petrel(フィジーミズナギドリ)
1885年にフィジーで採集された後、絶滅したと考えられていた種ですが、1984年に1個体が捕獲されたことで生存が再確認されました。その後、2009年に洋上において初めて撮影され、野外識別に関する知見が発表されました。また、2014年に1個体、2017年に本種と思われる2個体が観察されています(いずれもフィジーでの確認)。生態は謎に包まれていますが、フィジーのガウ島に繁殖地があると推測されており、その個体数は50ペア未満と考えられているとても希少な種です。
今回乗船したクルーズの航路では、フィジー周辺は航行せず、過去に本種の確認例もありません。そんな誰も予期しない本種が、3月17日にニュージーランドのスリーキングス諸島の北方沖で1個体見られました。残念ながら写真を残すことはできませんでしたが、体の中央付近に位置する長くて丸みのある翼をもつ独特の体形は、まさにFiji Petrelそのものでした。
なお、過去のWPOクルーズにおいて本種に姿が似る未記載種と考えられる個体が、パプアニューギニアのニューアイルランド島沖で複数回観察されており、本種とあわせて今後の新たな情報が期待されています。
③ Lava Petrel
3月24日、ソロモン諸島サンタアナ島の南約350kmの海域で、2個体の"誰も見たことのない"ミズナギドリが出現しました。2個体とも全身が黒褐色で、翼下面先端部に明瞭な白色パッチがあり、翼上面の初列風切基部には白色部が見られました。一見するとカワリシロハラミズナギドリの暗色型と同じ羽色ですが、嘴が太く、長い頸、長い翼といった特徴や、パワフルな羽ばたきを伴う飛翔は、これまで知られているどのミズナギドリとも一致しません。観察時には、大型のトウゾクカモメ類なのでは?という印象も受けました。これらの特徴から、おそらく未記載種だろうとの結論に至りました。また、見られた海域には海底火山があったこと、そして火山のような色合いの羽衣から、船上では暫定的に溶岩を意味する"Lava" Petrelと名づけられました。
なお、このLava Petrelと考えられる個体は、2014年4月にソロモン諸島サンタクルーズ諸島周辺においても1個体が見られています。これらの海域では海鳥の観察や調査はほとんど行われておらず、遠隔地であるために行くことも容易ではありません。今後の同クルーズでは、このLave Petrelが見られた海域を再訪する予定であり、再び観察され、さらなる情報が得られることを期待しています。
④ Beck's Petrel(ソロモンミズナギドリ)
1928年と1929年にパプアニューギニアで採集された後、絶滅したと考えられていた種ですが、2007年に同国のニューアイルランド島周辺で再発見されました。その後もニューアイルランド島周辺の海域において度々観察されており、繁殖地もニューアイルランド島にあるのではと推測されています。現在、洋上で捕獲した個体に発信機を装着し、繁殖地の解明とその保全を行う取り組みが進められています。 本種はTahiti Petrelに酷似しており、洋上での両種の識別はとても難しいと言われています(以前は同種だと考えられていました)。そこで、今回のクルーズでは、ぜひ本種を観察し、実際にどの程度Tahiti Petrelと異なって見えるのかを確認したいと考えていました。
3月31日、期待していたニューアイルランド島の東側の海域で、少なくとも8個体を見ることができました。
Tahiti Petrelと直接比較することはできませんでしたが、スリムな体型や僅かに短い翼、そしてTahiti Petrelよりも軽やかな飛翔であることがわかりました。また、小さい頭部との比較で嘴が長く見えることも本種を示す傾向であることがわかりました。図鑑や論文の中の写真や情報だけではイメージしづらいことも、実際に見ることで自分の中でかみ砕いて理解することができ、実物を見ることの大切さを改めて認識しました。
⑤ Heinroth's Shearwater(ビスマルクミズナギドリ)
1901年にパプアニューギニアのニューブリテン島などで採集された後、絶滅したと考えられていた種ですが、1979年にブーゲンビル島で巣立ち後間もない幼鳥が見つかったことで本種の生存が再確認され、2003年に洋上において初めて撮影されました。その後も、パプアニューギニアのニューアイルランド島やブーゲンビル島、ソロモン諸島のコロンバンガラ島周辺の海域で観察されていますが、繁殖地はまだ見つかっていません。
本種は他種との識別が大きく問題となる種ではありませんが、その希少性と特異な特徴(細くて非常に長い嘴)から、ぜひ見たいと思っていた種です。
3月29日、過去に度々本種が目撃されているコロンバンガラ島の沖合で、ついに本種を見ることができました。立て続けに9個体が見られましたが、それらはいずれも夕方で、コロンバンガラ島の方向へまっすぐに飛んでいきました。本種はコロンバンガラ島で繁殖している可能性が指摘されており、今回の観察もそれを支持するものでした。翌30日も6個体を観察し、このうちの1個体は船と並走したため、じっくりと見ることができました。
⑥ New Caledonia Storm-Petrel(ニューカレドニアウミツバメ)
本種は2008年の同クルーズにおいてニューカレドニアの沖合で発見された未記載種です。その後もニューカレドニアの沖合やオーストラリア東部の珊瑚海で度々観察されており、繁殖地はニューカレドニアにあると推測されています。
本種はニュージーランドに生息するニュージーランドウミツバメに酷似しますが、僅かに大きく、翼下面の雨覆の白色部が小さい、嘴が長いといった違いがあります。このような特徴から、おそらく1839年にサモアで採集されたウミツバメ類と同一だと考えられています。本種のような、腹部に縦斑のあるウミツバメ類はフレンチポリネシアのマルケサス諸島でも採集されており、それらは少しずつ特徴が異なっていることも知られ、それぞれ別の未記載種である可能性があります。
3月21日、ニューカレドニアを出港した日に、幸運にも3個体を見ることができました。いずれも僅かな時間の観察でしたが、Titan Storm-PetrelやPolynesian Storm-Petrelに似た力強い飛び方は、酷似するニュージーランドウミツバメと大きく異なっていました。 現在、本種の捕獲調査が試みられており、それが成功し、遺伝子情報の解析などが進めば本種が正式に「種」として認められることになるでしょう。
⑦ Solomon Band-rumped Storm-Petrel
Band-rumped Storm-Petrel(クロコシジロウミツバメ)は、太平洋(日本やハワイ、ガラパゴス周辺)と大西洋に繁殖地が知られています。もともと太平洋南西部には生息していないと考えられていましたが、2008年の同クルーズにおいて、ニューカレドニアからソロモン諸島にかけての海域に生息していることが確認されました。その後も同じ海域で度々観察されており、ニューカレドニア周辺に未知の繁殖地を持つ個体群である可能性と、日本やハワイの繁殖個体群が非繁殖期に渡っている可能性が推測されています。日本の個体群と似ているのか、どの程度違うのか、実物を見ることを望んでいた種です。
今回のクルーズでは、これまでと同様にニューカレドニアからソロモン諸島までの海域で計5個体を見ることができました。日本で繁殖する個体と比較して、嘴が僅かに細長いようにも見受けられましたが、明確な違いは分かりませんでした。今後の新たな情報が期待されています。