テクニカルノート

スズメが減っている!

文:佐竹 一秀 2013年9月1日

色づく稲とスズメたち
image001.jpg

スズメ

田んぼを見ると、稲穂がわずかに色づき、首も少し垂れ始めています。今年の夏はゲリラ豪雨が頻発し、あちらこちらで被害が出ています。濁流渦巻く茶色の川、崖崩れ、冠水した道路、床まで水に浸かった民家、これらの映像が毎日のようにテレビに映し出されていました。当然ですが水田も大きな影響を受けていると思います。幸いにして宮城県内での大雨の話は余り聞きませんので、豊作なのでしょうか?今後、台風がこないことを望みます。

わずかに色づき始めた田んぼにスズメの群れがいました。今年生まれの幼鳥も含めて、10数羽の群れです。もう少し秋が進とさらに大群になることでしょう。スズメは稲を食べる害鳥ですが、稲に着く害虫も食べてくれます。害鳥・益鳥は人間中心の考え方ですので、スズメには関係ないことですが・・・。昔ヨーロッパのある国で、サクランボへの害を除くために、スズメを大々的に駆除したところ、逆に害虫が大発生してしまい、慌てて駆除を止めたとの記録もあります。身近なスズメですが、近年が少なくなったとの話も良く聞きます。

スズメは日本にどれくらいいる?

日本全国にどのくらいの数のスズメがいるのでしょうか。1万、10万、100万、もっと多いのでしょうか。鳥類の調査方法として、ラインセンサス法というものがあります。あるルートを歩き、両側で見かけた鳥類の数を数える方法です。例えば1.0kmの距離を歩き、両側各50m(幅100m)範囲に、50羽のスズメがいたとします。その場合、50羽/0.1平方キロメートル(1km×0.1km)=500羽/平方キロメートルになります。日本全土に拡大すると、日本の面積は377,900平方キロメートルですので、500羽/平方キロメートル×377,900 平方キロメートル=188,950,000羽(約2億羽)となります。今回は仮に50羽いたとしての話ですが、実際1kmで50羽は多いのでしょうか、はたまた少ないのでしょうか。頭の中で想像してみてください。1kmは結構な距離ですし、100m幅も結構広いですよね。よくわかりませんがもっといるような気になりませんか…私だけでしょうか。

山の中にスズメはいない

ただ、気をつけなければいけないのは、周辺の環境です。水田なのか、住宅地が集まっている市街地の中なのか、それとも山の中なのか、あるいは緑のほとんどない工場地帯なのか。周囲の環境によってスズメの数は大きく異なります。水田や畑、それに民家がある里地の環境であればスズメの数は多いですし、市街地であれもう少し少なくなります。また、山奥の森林地帯ではどうでしょうか。トレッキングや登山をする人は感じていると思いますが、山の中には全くと言っていいほどスズメはいません。山道を歩いていてスズメの姿が確認できれば里地に近いところまで下りきた証拠です。人間のそばで生活することで外敵から守ってもらい、餌や繁殖場所を確保し、繁栄している鳥です。人間生活と関係の深い鳥とも言えます。それぞれの環境でラインセンサスを行って、スズメの数を把握し、日本国内にその環境がどのくらいあるかを調べることで、大まかなスズメの数が推定できると思います。ただ精度良く把握するためには、環境を細分化し、調査回数を増やす必要があると思います。日本は南北に長いので、北と南では生息密度が異なっているかも知れません。

季節によってもスズメの数は変動します。春先には親鳥しかいませんが、繁殖後の夏には巣立ち雛もいます。一つの巣からは1~5羽が巣立ちますが、平均的には2羽程度です。また2回繁殖するつがいもいますので、2羽の親鳥に対して2~3羽の子スズメがいます。そのため、繁殖直後は親鳥2羽+2~3羽の小スズメの計4~5羽となり、春先の倍以上になります。夏~秋、冬を過ごす間に、天敵の猛禽類や猫等に食べられて、翌年の繁殖前には2羽程度になります。このように時期により数が倍以上も大きく変動しています。

均衡を保つ生態系

話を大幅に脱線させてみましょう。1つがい2羽のスズメが翌年春に子スズメを含めて3羽になると仮定してみます。要するに1年で1.5倍に増えるということです。最初2羽だったのが4年後に10羽(5倍)、10年度に115羽(約60倍)、20年後に6,650羽(約330倍)、あっという間にスズメだらけになり、生態系も崩れその先どうなるかは想像もつきません。ほぼ1つがい(2羽の親)からは親も含めてほぼ同数しか生き残れないのが、微妙なバランスを保つ生態系のスゴ技です。

巣を数えて数を把握
image002.jpg

スズメの大群

実際にある人がスズメの数を調べて本にしています。上に示したように環境ごとにスズメの概数を算出し、面積比で日本全体に置き換え個体数を推定するやり方です。環境ごとの面積はインターネットで知ることができ、日本全体を1km×1kmの区画に仕切り、その中に農地がどのくらい、森林がどのくらいなど、データ化されていますので、これを利用したようです。また、この人は、スズメの個体数ではなく、巣の数を調べました。前述のように個体数を調べると、時期による変動を考慮する必要がありますが、巣を調べることでその問題は解決できます。ラインセンサス法では、何かの陰に隠れてスズメが見えずに数え漏らしがおこり、逆に数えた後にスズメがルートの先に移動していて重複してカウントする事もあります。調査回数や調査する場所を多くすることで、この問題を解消できそうですが、時間と労力がかかり過ぎます。そう考えると巣を数える発想は素晴らしいです。巣探しは難しそうですが、馴れてくると500m×500mの範囲を5時間程度かけて歩き回ると、ほぼ把握できるとの事でした。5時間歩き回って巣探し…特殊技能と言えると思いますが…。

スズメの数は約1,800万羽と推定

環境は商用地、住宅地、農村、大規模公園、森の5区分、各区分内について2,3箇所を調査されていました。地域間の偏りについても秋田、埼玉、熊本の3県で調査されていました。その結果としてスズメの巣は700~1,100万の間にあり、最も可能性の高い数として約900万巣との結果が得られました。巣の数×2がスズメの個体数ですので、スズメの数は約1,800万羽と推定されています。日本の人口が1億3万人くらいですので、総人口の1/7程度のスズメがいることになります。この数が多いか少ないかは、各自の見方しだいですが・・・。

20年で半分になったスズメ…

併せてスズメが減っているかについても調べられていました。スズメによる農業被害、有害駆除・狩猟羽数、自然環境保全基礎調査、鳥類標識調査の四つのいずれの結果もスズメの減少が認められていたとのことでした。減少率については、算出は難しいとのことですが、1990年から2010年の20年で少なくとも約半分になったとのことでした。20年で半分とはかなりショックな結果ですね。なぜ減ったかについては、最近の民家は密閉性が良いため、巣を造りにくい構造になっており、併せて餌場も少なくなったのが、大きな要因ではとの事でした。そのため、スズメの世界も日本と同じように少子化が進行しているようです。

シジュウカラがスズメの代わりに?
image003.jpg

シジュウカラ

明らかにスズメが減少しており、近年顕著になってきたので、今後の影響がとても気になります。スズメが減ることで、害虫が増え、逆にスズメを餌にしている猛禽類が減る。スズメと近い生態のシジュウカラは、増えた害虫を餌にして増え、シジュウカラが増えれば、スズメを餌にしていた猛禽類がシジュカラを多く食べるようになり…。スズメの代わりにシジュウカラの群れが飛び回る事になるのでしょうか…。

結局、スズメは減ったがその先は?何が何だかわからなくなる話をして終了です。ただ、いろいろな種類がいないと(生物多様性が保たれないと)、アッという間にバランスが崩れて、絶滅です!

  • 参考資料
  • 三上修『スズメの謎』(誠文堂新光社、2012年)

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


前の記事 <<  >> 次の記事

←連載・E-TEC一覧へ戻る 記事一覧へ戻る△ ページの上部へ戻る▲