テクニカルノート

新年早々嘘(うそ)と鷽(ウソ)!

文:佐竹 一秀 2014年1月20日

今年の雪の量は…
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ウソ(♂)

年が明けさすがに寒くなってきました。今日は1月12日、明日から明後日にかけて寒気がいすわり、日本海側は大雪とのことでした。今年は雪の多い年になるのでしょうか、それとも少ない…。

「雪の深い年は鷽(ウソ)が多い」

石川県金沢地方には「雪の深い年は鷽(ウソ)が多い」という俗信があるようです。ウソという鳥はスズメより少し大きい鳥です。夏は亜高山帯にいますが、冬には丘陵地や平地の公園などにも下りてきます。山地に雪が多く積もると、ウソの餌となる草木の種などが雪で覆われるため、群れになって平地に下りてくるということが理由のようです。近所の公園でも見ることがあり、人を余り恐れないため、ゆっくりと観察もでき、ふっくらとした体型でなかなか愛らしい鳥です。オスは頬から喉の部分が赤く、頭と翼の大部分と尾羽が黒、背中が灰色です。メスは頬から喉の部分は赤くなく、頭部の黒が目立ちます。口笛を吹くような声で(フイーフイー)と鳴きます。口笛を古語で「うそ」というところから和名になりました。

桜の花芽が大好き

愛らしい鳥ではありますが、時々問題を起こしています。実は、桜の花芽が大好きで、公園等の桜の木に小群で飛んできては、盛んに食べていきます。その結果として、花見の時期になっても、桜の花が少なく、それぞれの花は咲いているのですが、まばらに咲いているという状況になります。桜は一斉に咲き、一面、ピンク、ピンク、ピンクになるところに見ごたえがあるのですが、ちらり…ほらり…ではなんとも様になりません。去年の春は小岩井の一本桜や弘前公園の桜が影響を受け、寂しい花見になったとの新聞報道も見ました。仙台の西公園や榴ヶ岡公園の桜はどうだったでしょうか(花より団子(酒)の私には記憶がありません)。

ウソとアカウソ

冬に見られるウソには、もともと日本にいるもの(亜種ウソ)と、中国やロシアで繁殖し冬鳥として日本に渡ってくるもの(亜種アカウソ)がいて、ウソの飛来が多い年にはアカウソが多く観察されているようです。ウソなどの森林性の冬鳥の飛来数は年変動が大きいことが知られており、食べ物となる種子の多少や雪や寒さの厳しさが影響しているのではないかと考えられていますが、はっきりとしたことはわかっていません。「雪の深い年は鷽(ウソ)が多い」という俗信にも一理があるかもしれませんね。

カマキリは積雪予報士?
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オオカマキリ

同じような話でカマキリが積雪量を予測して、卵を産むという話を聞いたことがある人も多いと思います。「カマキリの卵は雪の中では死んでしまいますし、余り高いところに産み付けられると鳥に見つかりやすく食べられてしまうので、雪の上ギリギリのラインに生む」という話で、研究結果も公表されました。たしかNHKでも放送されましたし、新聞等でも紹介されたと記憶しています。大変面白く、そして興味深い話です。気象予報士も顔負けのカリスマ積雪予報士のカマキリがいたことになります。

動物の天気の予測は数時間程度

ただ、残念ながらその後この話を否定する研究結果が公表されています。雪の下にもカマキリの卵がありましたし、生きていて幼虫が出てきたとの事です。カエルが鳴き出すと雨、ツバメが低く飛べば雨というような、気象予報をする動植物の話もありますが、それぞれ気圧や湿度の変化を感じて鳴き出す、あるいは餌の昆虫類が低空を飛び、それを食べるために低く飛ぶということで、説明がつきました。これらの場合は数時間から半日程度先の変化を捉えて行動しているのですが、カマキリの場合は数ヶ月先の話です。もしそこまで予測できるのであれば凄い事ですが、そこまで先のことが予測でき対応策を考えて行動している生物がいるとすると、その時点で人間の能力を上回ります。地球上がカマキリだらけになって…人間がカマキリに狩られるという、ホラーな世界になってしまうのではないのでしょうか。そうでなくてもカマキリの雌は交尾中の雄を食べてしまう事もありますので…

新年を佳い年にする「鷽替え」

鷽に話を戻し、新年号らしい話題を一つ。鷽(ウソ)替えという神事があります。鳥の鷽が(ウソ)が嘘(うそ)に通じることから、前年にあった災厄・凶事などを嘘とし、本年は吉となることを祈念して行われる行事です。この神事は全国的な話ではありありませんが、太宰府天満宮、亀戸天神社、大阪天満宮などの天神様で行われます。多くの神社では正月に行われ、太宰府天満宮では1月7日、亀戸天神社では1月24日、25日に前年神社から受けた削り掛けの木うそを新しいものと交換してもらうことで、今年の幸せを願います。鷽にお願いしても聞いてくれそうもないのですが、是非今年を佳い年に、そして楽しく花見(酒盛り)が出来るよう、桜の花芽を食べないで下さい。

  • 参考資料
  • 国松俊英、谷口高司『鳥のことわざうそほんと』(山と渓谷社、1990年)、238-240頁
  • 酒井與喜夫『カマキリは大雪を知っていた-大地からの"天気信号"を聴く-』(農山漁村文化協会、2003年)
  • 田中誠二、小滝豊美、田中一裕『耐性の昆虫学』(東海大出版会、2008年)、57-67頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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