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震災から5年…(4)カエル

2016年7月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2023年11月29日)

5年後のカエル

震災から5年後の状況について、今回はカエルの話をします。東日本大震災の大津波で生息環境の田畑が海水をかぶり、塩分の苦手なカエル達がどのような影響を受け、どうなっていくのかが気になり、観察を始めてから今年で5年目、6回目となりました。このニュースレターでも何回か紹介してきました。場所は名取市閖上地区の水田で約1kmの範囲。車で移動しながら適当に停まり、5分程度その場での鳴き声を確認し、種、個体数、概略の場所を記録し、観察しました。その結果を以下に示します。

表-1 カエル類の鳴き声観察結果 ※個体数(地点数)
アマガエルシュレーゲルアオガエルトウキョウダルマガエルウシガエル
2011年6月5日11(11)---
2012年6月6日17(6)5(5)--
2013年6月27日76(16)4(3)6(2)-
2014年6月13日全域から鳴き声7(4)1(1)3(1)
2015年6月20日10(6)2(2)--
2016年6月15日36(27)--1(1)
  • アマガエル

    アマガエル

  • シュレーゲルアオガエル

    シュレーゲルアオガエル

  • トウキョウダルマガエル

    トウキョウダルマガエル

  • ウシガエル

    ウシガエル

4種を確認

確認されたカエルは4種。宮城県沿岸部の水田地帯では一般的な種です。震災前にも普通に生息し、春から初夏にはうるさい位の鳴き声を響かせていたと思います。次に観察地域に含まれている閖上中学校周辺の状況を写真で示しました。カエル類の確認状況と周辺環境を比較しながら見てください。閖上中学校は津波により1階部分が浸水し、その後は使用されておらず、昨年末(2015年12月)から解体工事が行われていました。2018年4月に閖上小学校と合わせて中小一貫校となり、現在の場所よりやや北側に建設される予定です。

◆閖上地区の震災後の状況写真(閖上中学校南側周辺)
  • 写真① 2011年3月21日(震災後10日目)

    写真① 2011年3月21日(震災後10日目)

  • 写真② 2012年10月29日(ヨシ等が繁茂)

    写真② 2012年10月29日(ヨシ等が繁茂)

  • 写真③ 2013年7月7日(ヨシ等が繁茂)

    写真③ 2013年7月7日(ヨシ等が繁茂)

  • 写真④ 2014年6月14日(水田耕作開始)

    写真④ 2014年6月14日(水田耕作開始)

  • 写真⑤ 2015年6月21日(圃場整備中)

    写真⑤ 2015年6月21日(圃場整備中)

  • 写真⑥ 2016年6月17日(水田耕作再開)

    写真⑥ 2016年6月17日(水田耕作再開)

以下に年ごとの状況を示します。

① 2011年(震災の年)

6月初旬、瓦礫や車、船が散在していて田んぼとは呼べない状況の中、観察範囲内に単独で11個体のアマガエルが弱々しく鳴いていました。塩水にまみれた田んぼでは、カエル達は繁殖できずに、絶滅してしまうのでは…。

② 2012年

瓦礫などの撤去は終わりましたが、用排水はまだ復旧せず、雑草は伸び放題で、水田がヨシ原になりつつありました。そのようななかアマガエルが6か所で17個体、シュレーゲルアオガエルが5か所で各1個体確認できました。塩分もだいぶ抜けてきたのでしょうか。個体が集まり始めていましたので、繁殖も期待できると感じました。

③ 2013年

2012年と状況は大きく変化しておらず、閖上中学校のまわりの水田はヨシ原になっていました。アマガエルが16か所で76個体、シュレーゲルアオガエルは3か所で4個体、さらに前の年まで確認されていなかったトウキョウダルマガエルも2か所で6個体の鳴き声が聞かれ、だいぶにぎやかになってきました。

④ 2014年

水田耕作が調査範囲の3割程度で行われていて、環境面ではだいぶ回復してきました。アマガエルは西側の一部に鳴き声の少ない場所もありましたが、ほぼ全域から鳴き声が聞こえました。他にシュレーゲルアオガエルやトウキョウダルマガエルも確認され、さらにウシガエルも1か所で3個体の声も聞かれました。

⑤ 2015年

アマガエルが6か所で10個体、シュレーゲルは2カ所で2個体と、去年に比べるとかなり少ない確認にとどまりました。原因としては、農地災害復旧工事・区画整理工事が行われていました。草地も残ってはいたのですが、工事の影響か全体としてカエル類の嫌いな乾燥化しているように見えました。

⑥ 2016年(今年)

アマガエルが27か所で36個体と比較的多くの確認がありました。農地災害復旧工事の影響を気にしていましたが、ほぼ全域で水田耕作が再開されていましたので、カエル類の生息環境が確保されたと思います。ただ、震災後に生息が復活できたシュレーゲルとトウキョウダルマの確認はありませんでしたので、来年以降に期待です。ウシガエルは外来種ですのであまりうれしくはありませんが…。

環境は戻りつつあるが、単調化の懸念も

塩水をかぶった田んぼから徐々に数を増やし、3年後の2014年には水田の一部が復活したこともあり、ほぼ全域で鳴き声が聞かれました。これは前年の繁殖がうまくいき、オタマジャクシから子ガエル、それらが冬を越して春に鳴き声を聞かせてくれたことになります。ですので、実際には2013年の秋、震災から2年半後にアマガエルはほぼ復活したと言えます。アマガエルはもともと適応力がありますが、思った以上に回復が早いと感心しています。しかし、2015年からの農地の復興事業は2度目の危機でした。右の写真は今年(2016年)の3月です。ガッチリと圃場が整備され、これを見たときは、今年は絶望的かとも思いました。しかし、結果は前述の通り、ある程度の確認が認められ、来年にはアマガエルはほぼ復活し、他のカエル類も確認される(ウシガエルは外来種ですのでできればいらないのですが…)のではないかと期待しています。

4回連続で震災後の防潮林・防潮堤、湿生植物・湿地環境、鳥類の話を書いてきました。未曽有の大震災、その後の復旧・復興事業、表面上は震災前に戻りつつある、と言いながら、環境はより単調化しています。多様性が重要といいつつも、なぜか足踏み、逆戻りしているように見えます。

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