ヨシに擬態する鳥
先日北上川の河口部のヨシ原を見に行ってきました。Ｙ先生が中心となってヨシ原の再生活動を行っている場所です。そこでＹ先生から下の写真をいただきました。何これ？と思う人も多いと思いますが、ヨシゴイのヒナです。正面を向いて首を目いっぱい伸ばしているものが2個体、脇を向いて首をやや伸ばしているものが1個体。まだ、見えませんか…黒い目が目立ちますので、正面を向いているものは黒い点が2つ並んでいますし、斜め左下にたれ下がったヨシの枯葉のすぐ下に黒い点が見えるのは横を向いている個体です。全部で5個体いるそうですが、他の2個体は後ろに隠れているようで見えません。ヨシにまぎれて、ヨシのようになって、外敵（私たち）から身を守っています。ちょっと滑稽ですが彼らは必死です。これが擬態（ぎたい）です。ヨシゴイはサギの仲間です。名前の由来はヨシ原にいるゴイサギのような鳥なので、ヨシゴイです。
ヨシゴイ（雛） 撮影提供：山田一裕氏
隠れる、それとも威嚇する？
擬態と言って思い出すのは、花になりすまして、近寄ってきた蝶をとらえるハナカミキリや枝のような体型のナナフシなど、昆虫が多いと思いますが、鳥でも見られます。下の写真はライチョウのつがいです。時期は春です。後ろがオス、前がメスです。ライチョウは日本では中部山岳地帯に留鳥として生息していて、冬は写真のメスのように（オスも）真っ白な羽に生え変わり雪と見分けがつきません。夏は山肌に似せた白と茶の羽色にかわります。雪や山肌に擬態し、天敵のイヌワシやオコジョから身を守っているのです。地球温暖化の影響で、高山に追い上げられ、これ以上温暖化が進むと、住む場所がなくなってしまうとも言われていて、今後とも監視を続けていかなければならない重要な鳥類の一種です。
このように、外敵から身を守るため、擬態する鳥もいますが、違う方法をとる種もいます。右の写真はサンカノゴイという、ヨシゴイ（サギ）の仲間です。この種もヨシ原に住んでいます。羽が枯れたヨシと同じような色合いですので、擬態をしているとも言えます。しかしそればかりではなく、外敵が現れると、翼を広げて体を大きくみせ、威嚇を行います。フクロウ類でもこのような行動をとる種もいます。最近出没情報の多いクマですが、もし出くわした場合に、傘があればそれを開くことで人を大きく見せられるので、撃退ができる可能性があるとの話です。
ライチョウ（後♂、前♀）
サンカノゴイ
相手に攻撃させて、巣の位置を特定…その隙に…
次は托卵（ほかの鳥の巣に卵を産みつけ、育ててもらう方法）で知られる、カッコウやホトトギス等の鳥たちです。これらの種は、猛禽類のオオタカやハイタカとよく似た羽色をしていますし、飛び方も猛禽類に似ています。これら猛禽類が近くに現れると小鳥類はモビングという疑似攻撃をよく行います。体格差や攻撃能力では全くかなわないのですが、つがいや数個体でまとまって、あるいは別の種も加わって、巣の周辺から猛禽類等の邪魔者を追いだすのです。カッコウ類の行う托卵は、巣内に抱卵中の親鳥がいてはできません。親鳥が巣を離れた一瞬のスキをついて、托卵するのです。托卵先の小鳥がつがいでモビングを行うと、結果として巣が空になってしまいます。そこが狙い目なのかもしれません。カッコウ類も托卵相手の巣がどこにあるのかを探すことも簡単ではないと思います。よくモビングを受ける場所があれば、その近くに巣があり、少しは巣探しが容易になるのではないでしょうか。カッコウ類のオスが小鳥の巣の周辺を飛び回り、親鳥をモビングさせるようにしむけ、巣が空になった瞬間にメスが卵を産み付けます。猛禽類に擬態？することで、小鳥類をおびき出し、巣探しを容易にし、その隙に托卵する。まさに一石二鳥、なんと高度な戦術なのでしょうか。
ジュウイチ（托卵性）
ミョウガの妖精？
冒頭にヨシゴイのヒナを載せましたが、親はどんな鳥なのでしょうか。気になっている人もいると思いますので、以下に載せます。枯れかかったヨシ原であれば、目立たないのですが、青々としたヨシ原では逆に目立っています。ただ普段は、ヨシ原内に潜んでいて、あまりヨシ原の際に出てくことはありません。最後にネットでヨシゴイを検索している時に面白いコメントを見つけました。「ミョウガの妖精」、ヨシゴイがこう呼ばれて、少しだけブレイクしているようです。どこがミョウガの妖精かはよくわかりませんが…。
気になる方は以下をどうぞ。
もうミョウガにしか見えない！ミョウガそっくりの鳥「ヨシゴイ」 : カラパイア
ヨシゴイ（成鳥）
ミョウガ